写真家の鋭い、優しい感覚で描写されていた。水道、電気、ガスの生活インフラが無い、自給自足の自然溢れる村で、避難を断り、生まれ育った大地に止まった老人達の生活をのどかに、それでいて、目に見えない恐怖にさらされながら、もくもくと生活していた。
村は高い放射能に侵されていたが、不思議なことに、泉からは放射能が検出されなかった。100年前の泉が今、涌き出ており、それを命の糧として生活してる。毎日の水汲みが命を繋ぐ、年老いて、水汲みが出来なくなるときは、命が尽きる時だ。
坂本龍一の重たくるしく、それでいて逞しく力強い音楽が静かに流れていた。
映画鑑賞後は監督の写真家の本橋成一のトークが有ったが、現地病院での子供達が次々と天国へ旅立つ姿をみて、大人達は何てことをしでかしたのだと自責の念に囚われた。人間はもう少し、ゆっくりと、生活を楽しむ、彼らのような、人間の原点を見つめ直したいと話してた。
ベラルーシ共和国ゴメリ州ドゥヂチ村。 チェルノブイリ原発事故で汚染された小さな村。 皮肉にも、放射能に汚染された村は、原子力の恩恵を受けない生活を続ける村だ。
政府からの立ち退き要請で、村は地図から消えてしまった。 村の3ケ所の入口はゲートで遮断され、 外部の人間は許可証がないと入れない。
それでも故郷を離れず、汚染された村に残る6家族がいる。 ユートピアのように美しい村。四季が移ろう。 麦やじゃがいもを育て、きのこを採り、詩を口ずさむ。 美しく厳しい自然とともに、大地に根ざして明るくたくましく生きる彼らの暮らしは、 豊かさとは何かということを私たちに教えてくれる。
本橋成一が、写真家ならではの美しい映像で綴る、いのちの大地の物語。
ベルリン映画祭を始め、世界各国で好評を博した『ナージャの村』から5年。 写真家・本橋成一と音楽家・坂本龍一と組んで〈泉〉を主題としたドキュメンタリーを完成させた。
舞台となる〈泉〉は、1986年4月26日に起こったチェルノブイリ原発(旧ソ連・現ウクライナ共和国)の爆発事故で被災した、 ベラルーシ共和国東南部にある小さな村ブジシチェにある。 この村の学校跡からも、畑からも、森からも、採集されるキノコからも放射能が検出されるが、 不思議なことに、この〈泉〉からは検出されない。 「なぜって?それは百年前の水だからさ」と、村人たちは自慢そうに答える。
この百年、人間は何の豊かさを求めてきたのだろう。 《水の惑星=地球》の強い意志のようにこんこんと湧く〈泉〉は、私たちに"本当の豊かさとは何か"を静謐に語りかける。
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