2011年8月30日火曜日

 

 今回の大震災で福島県は特に原発風評の心理的被害を受けた。目に見える物の破壊からの復旧、復興は物理的な腕力で解決策は見いだせるが、心理的被害はどのように対応するか?。

本日、日本は新総理大臣を選出し、目前の最大課題の震災復興が待った無しで、迅速に強力に進めて行かねばならぬ。ヒントを与える文章を見つけた。


経済復興対応 

・これまでの、GDP2位(最近は中国に抜かれたが)の経済的実力の日本国の  体力の全面投入。

・世界が今回、驚嘆した日本国民の長年培った資質の発揮、全国民一丸の復興 努力。


風評対応

 ・安全と安心は違う・・・安全を訴えるのではなく、安心の信頼を築く

 ・母と子の信頼関係は外部からのあらゆる攻撃から母と子を守る

  

『トヨタ危機の教訓』

アメリカの経営学者ジェフリー・ライカー氏とオグデン氏共著の

・トヨタがリーマンショックに次ぐ不況と

・全米で騒がれた急加速問題という

2大危機を如何にして乗り越えたか

教訓1 「あなたの会社の危機への対応は昨日始まった」
危機をチャンスに転じるのは、すべからく企業文化であるとの結論、これ
が一番目に来る。

それは、危機が始まる前から全社員に植え付けられていた行動だ。われわれ
の推測では、不況という危機への対応で最も重要な決定は、不況到来前の好
調な時期に保守的なバランスシートを維持し、

・多額の現金を手元に置き、

・高い信用格付けを獲得したことだ。

たとえば、好調な時期に築き上げた良好な財務体質があったからこそ、

・不況時に人員整理をしないどころか、今後を見据えた人材育成に力を注ぐ

ことができた。

・トヨタは急加速問題で40億ドルものマイナスを背負いながら、

全米のトヨタディーラーに前年以上の好業績を生ませた。それまでに蓄えたカ
ネをディーラー救済のためにつぎ込んだからであり

その裏付けとなったのは長年にわたる良好な財務体質であった。

トヨタは日本だけで社員数が32万人に上る大企業である、全世界では10
0万人にもなろう。それだけの人が一致して危機を乗り越えようとするには、
トップの一言や通達などで済むわけはない。また、新しく作ったビジョンや
目標などで済むわけはない。長い時間をかけてつくった企業文化こそがもの
を言うのだ。

良好な財務力だけでなく、ハンセイ(反省)の文化、チャレンジ精神、人間尊重の精神、ゲンチ・ゲンブツ(現地・現物)、カイゼン(改善)、チームワーク等を取りあげて、これらの徹底こそがトヨタの企業文化であり、これが危機を乗り越えた原動力である。

・「企業の真の危機とは順境の時にある。危機は順境の時に芽生えている」

とか

・「事の成るは逆境の日にあり。事の破るるは順境の日にあり」と言われる。

「社長とは究極のハイリス請負業である」と言われるが、そのことを豊田社長が体現した。


「ハンセイとは単なる内省よりずっと深い。

・それは自分の弱点に正直になることを意味する。

・でもそれで終わるわけではない。自分の弱点を克服するた
めに、自分をどのように変えるかが問題」。

教訓2「責任を負う企業文化は、責任転嫁の企業文化に勝つ」

たとえば、リーマンショックを引き金とする世界の自動車業界を襲った大不
況、そしてアメリカでの急加速問題に関する誤解に満ちたメディアの報道。
いずれも、トヨタの責任とはいえない面が多々ある。
いくら自己責任といっても、トヨタはこの2つにも自己責任の原則を守るべ
きだろうか?ところが、トヨタは敢然としてその両方に責任を負い、一切の言い訳をしな
かった。たとえば、急加速問題と組み合わせて追求された「戻りにくいペダル」を製
造していたのは部品メーカーのCTS社である。トヨタはCTS社も含めて、


如何なる品質欠陥も部品メーカーのせいにはしないという方針を守り抜いた。


「その部品を車に入れたのは私たちだ。だから責任はトヨタにある。それだ
けの話だ」という態度を初めから最後まで貫き通した。

結局のところ、急加速問題とは車自体の問題ではなく、「車の使い方」、
「運転方法」の問題であった。したがって、「車を運転するユーザー」の責
任に帰するという答えもあったはずである。しかし、トヨタはそのような答
えを出さず、次のように考えた。豊田章男社長の言である。

「私たちが学んだ教訓の一つが、安全と安心とは違うということだ。私は自
信を持ってトヨタの車は安全だと言うが、(車に関するあらゆる事項に関し
て)お客様にもっと安心していただけるように説明することについて、改善
の余地があったと思う」。

すなわち、いくら安全な車ではあっても、お客様はそれだけで安心するとは
限らない。安全と安心は違うと考えた。そのギャップを埋めることにトヨタ
は改善の余地を見出した、という。

そして、「トヨタの失敗は、お客様の心の中に善意の基盤を作らなかったこ
とだ」とし、豊田章男社長は次のようにそれを説明したという。

大量生産した料理がいかに安全だとしても、母親が作ってくれた食事と同じ
ような安心感は得られない。仮に食事を食べたあとに、その人が病気になっ
たとする。そして、誰かが母親の作った料理がその原因だったとする噂を流
したとする。しかし、病気になった本人はそれを信じないだろう。このよう
に、母と子の信頼関係は外部からのあらゆる攻撃から母と子を守る。

「このような場合でも、母と子の関係は変わらないでしょう。私は母と子の
関係は外部の雑音から完全に遮断されていると思う。・・・・そこで私たち
がお客様に話しかける方法も、安心感を持って貰えるようにもっと改善しな
ければいけない」。

すなわち、2億4千万人の人とトヨタとの関係を母子関係と同様なものにし
よう、というのだ。2億4千万人の子供を持つ母親!

それができなかったことを反省するというのだから、並みの話ではない。そ
れほどまでに徹底して自己責任を追及するのだ。

トヨタが急加速問題で苦境に立ったのは、マスメディアで報道される噂や暗
示によって過度に不信感を持たれたためである。これについて、トヨタは次
のように考えたという。

なぜ、多くの人々がそんな根拠のない噂や暗示に乗り、トヨタ車が暴走する
などという印象を持ったのか?なぜ、そのように人々の論理が飛躍してしま
うのだろうか?自分たちが決して情報を隠したわけではないのに、なぜ人々
はトヨタは嘘をついている、都合の悪いことを隠している、と思ったのだろ
うか?

そういうことを徹底的に調べ、考えた結果として「お客様の安心を得る点で
努力が足りなかった」と結論を出した。これほどまでに自己責任を追及する。


教訓3 「最良の文化でも弱点が生まれる」

何年間もトヨタを研究してきたが、継続的改善が共有された企
業文化への投資は驚異的であり、他社には見られないユニークなものだ。

ここでの教訓は、最善の文化でも弱点が生まれることだ。これだけトヨタウェ
イ(トヨタ式)を全社に広めるために努力しているトヨタですら、文化の弱
体化に襲われることがあるとしたら、他社も同様だ。

それを避ける確実な方法はない。トヨタの経験が示すように、

継続的改善の文化にとって最大の危険は成功することだ。

それでは成功がもたらした弱点とは何だろうか?それについて、豊田章男社
長が次のように語ったという。

「問題は成長ペースが人材育成ペースより速かったこと・・・・成長ペース
の問題ではなく、成長ペースと人材育成ペースとの関係が問題だった」と。

年々シェアを拡大し続け、ついに自動車業界トップに到達したのはよいが、
その売り上げ拡大ペースが速すぎて、人材育成ペースがそれに追従できなく
なっていた。それが致命的な問題だ、というのだ。

具体的には、どういう点で人材育成が遅れたというのだろうか?それについ
て、豊田章男社長は言う。

「私は社員が目的と手段を混同していることに気づいた。換言すると、トヨ
タにとっての目的は自動車事業を通じて社会に貢献することだ。

その目的を達成する手段として、より多くの車を売って、その結果、再投資
する資源をより多く手に入れようとする。

しかし、より高い売上と利益を目的にすると、大きな過ちを犯すことになる」
と。


教訓4 「企業文化のグローバル化とは、バランスを取り続けること」

トヨタの企業文化の強みは、それが共有されていることだ。現代の多国籍
企業にとって最大の難問は多数の国の文化を横断して企業文化を共有するこ
とだ。

しかし、それがアメリカ現地の人々の感情からやや離れた意志決定をさせる
原因になってしまった。したがって、今回の危機をきっかけにして、トヨタ
は意志決定権を世界各国の現地法人に与えることにした。

それはよいのだが、今度は必ず意志決定が各国で乱れたり、遅れたりすると
いう問題が起こるであろう。「意志決定の分散化には当然リスクが伴う」と
はそういうことである。

集中化と分散化、グローバルとローカルとの適切なバランスを取ることが困
難至極なのは、誰もが知っている。それを承知の上で、トヨタは意志決定を
世界中に分散させることにした。

それは、トヨタが持つ非常にローカル色の強い企業文化をグローバル化させ
ることである。それができなければ、今後のトヨタは意志決定の過ちと遅れ
に悩まされることになろう



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